セミナー『労働契約をめぐる労働者側同意の要否』の講師を務めます

 6月15日(金)14時より、株式会社ブレインコンサルティングオフィスにて講演を行います。

『社労士が知っておきたい契約実務 労働契約をめぐる労働者側同意の要否~権利義務の発生・変動・消滅で必要な法知識』
株式会社ブレインコンサルティングオフィス(同社サイトにリンクします)

 2020年に改正民法が施行されます。改正内容には契約に関する事項が多く、この影響もあるのか、最近の労働条件の設定・変更をめぐる裁判例においては、就業規則による集団的処理とは別に、労働者の個別的な同意が求められるようになってきました。

 例えば、退職金減額の効力が争われた山梨県民信用組合事件において、最高裁平成28年2月19日は、退職金の支給基準を変更することの同意書面に署名押印をしたのに、労働者の同意があったとは認められないと判断しました。本件では、当初、社労士が退職金を同一水準に保障するとの同意書案を作成し、これが職員説明会で配布されていました。他方で、同時に支給基準の変更も口頭で説明されていました。この事実経過から使用者側としては、職員には説明した上で同意を得たと認識していたわけですが、逆にちぐはぐとなった使用者の対応は評価されませんでした。それでは、使用者の説明には何が足りなかったのでしょうか。

 配置転換についてみると、これを会社の専権事項と考えている経営者は少なくありません。リーディング・ケースともいえる東亜ペイント事件・最高裁昭和61年7月14日判決が、労働者の個別的な同意を不要として、営業社員に対する神戸から名古屋への転勤命令が有効と判断しているので、このような考えを持つことは自然であるかもしれません。しかし、会社の配転命令権はなぜ発生するのかというと、それは労働契約です。配転は労働契約の変更に当たりますから、労働者の同意がない配転はリスクを伴います。

 特に労働者の健康状態をめぐる争いが増えており、抑うつ状態により欠勤や休職を繰り返していた中学校教諭を配転した事案を紹介します。鳥取県・米子市事件・鳥取地裁平成16年3月30日判決は、配転による病状悪化について損害賠償責任を認めました。校長は、健康状態が悪化した教諭に対し、「よかれ」と思って、生徒数の少ない分教室への配転を命じたのですが、この違法性が肯定されました。それでは、校長は配転に当たって何を考慮すべきであったのでしょうか。

 うつ病との関連では、休職した労働者が職場復帰をする際に降格や減給をすることがあります。Chubb損害保険事件・東京地裁平成29年5月31日判決は、抑うつ状態により休職した労働者が職場復帰をする際に降格・減給された事案につき、使用者が一方的に降格することは人事権を濫用すると判断しました。そもそも減給を伴う降格について就業規則に根拠規定がなかったケースなのですが、仮に就業規則や労働者の同意があったとしても、うつ病によりパフォーマンスが悪いという理由だけで降格・減給をすると無効となる可能性があります。

 以上の事例は、当職が講師を務める上記セミナーで取り上げる予定です。

 労働者の同意は取ればよいというものではなく、キーワードは「自由な意思」です。特に労働条件の不利益変更の場面では、労働者に自由な意思を形成してもらうために、どのような説明を行い、何を配慮すべきであるのかが、労務管理において求められます。

 この感覚を磨くことが労働トラブルを防止するために必要です。その意味で、社労士はもちろんのこと、企業の経営者や人事労務担当者も、労使関係において契約の観念を意識する必要があるでしょう。

 上記セミナーでは、労働契約の発生・変更・終了の各場面で労働者の同意が問題となった裁判例を取り上げ、望ましい企業の対応を解説しますので、ぜひご参加いただきたくご案内申し上げます。

 

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