社員が会社近くの店で企画を考えていても懲戒できるか

 ある社員が、会社近くのファストフード店に行って2時間以上も戻ってこないので、上司が確認をしたところ、「企画を考えていた」と答えた場合、さぼり行為として、当該社員を懲戒処分にすることはできるでしょうか。

 さぼり行為は、労働契約上の労務提供義務に違反した債務不履行であるため、このことから直ちに使用者が懲戒権を行使することはできません。

 ただ、労働者は、信義に従い誠実に労務提供義務を履行しなければなりません(労働契約法3条4項)。これを「職務専念義務」ともいいますが、この職務専念義務の違反を広くとらえて懲戒処分を課すことは許されません。義務違反の程度が著しく、他の社員の職務執行が妨害され、職場の秩序が乱されたという場合に懲戒処分が問題になってきます。

 使用者に懲戒権が認められるとしても、使用者が懲戒権を行使するためには相当な根拠と理由が必要となります。職場の上司が、同僚社員より「毎日、近くのファストフード店に行っているらしい」と聞く一方、当該社員より「企画を考えていた」との弁明がなされているのであれば、懲戒事由に該当する事実の存在につき合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の理由が認められるときに、使用者は懲戒権を行使することができます。

 人事労務担当者としては、当該社員から十分かつ詳細な事情聴取を行い、その事実関係と動機・目的等を正確に把握し、「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情」(労働契約法15条)を調査しなければなりません。さぼり行為は、労働契約上の労務提供義務に違反した債務不履行であるため、懲戒権を行使するには、当該社員の職場離脱により、具体的に、他の社員の職務執行が妨害され、職場の秩序が乱されたかどうかを調査することが必要です。

 調査の結果、当該社員のさぼり行為は軽微な職務専念義務違反というのであれば、懲戒権は行使できません。これに対し、職場離脱が長期間または頻繁に継続しており、ファストフード店に行く必要性もなかったのであれば、当該社員には、懲戒事由に該当する事実の存在につき合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の根拠と理由が認められるのであり、懲戒権を行使できることになります。

 事業場において水分補給をするのが困難であれば、ファストフード店に行って喉の渇きを癒すことは、人間が生理的に必要な行為となります。短時間であれば、職場離脱とまではいえないこともありますが、当該社員が外出しているのは2時間ですから、必要以上に長いといえます。ただ、職場の秩序が乱されていないというのであれば、本当に懲戒処分を課すのが相当なのかどうかということが問題となり得ます。

 当該社員の外出していた期間が短く、当該社員のいうとおり次の企画が検討されており、業務に具体的な支障をきたしたことはないというのであれば、まずは今後同様の行為を繰り返すのであれば処分対象にすることを警告した上で、懲戒処分に至らない厳重注意をすることにとどめるということも考えられます。

 懲戒処分前の措置にとどめたにもかかわらず、当該社員がその後もファストフード店に行き続けるのであれば、厳重注意後の職場離脱を含めて懲戒処分の対象とすることはやむを得ないでしょう。その際でも当該社員に弁明の機会を与えるなどの適正手続を怠らないようにしましょう。

 


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