長時間労働防止とメンタルヘルスケアのための職場環境改善

 長時間労働を防止し、メンタルヘルスケアを実施するため、職場環境を改善するには、業務の適正化と良好な人間関係の2つを目標に設定します。

 労働安全衛生法65条の3は作業の適正管理を定めていますが、一連続作業時間と休憩時間の適正化、作業量の適正化が含まれるというのが行政解釈です。そのため、労働時間を把握することが必要となります。この規定は電通事件・最高裁判決(平12.3.24)が使用者の注意義務を導く法的根拠としており、使用者は健康障害が起こらない程度まで労働時間を削減する義務を負っているといえます。

 この義務を履行するためには、使用者が労働時間を適正に把握した上で、その結果を分析・評価することが重要です。

 労働安全衛生規則に基づき、長時間労働者に対する医師による面接指導の要件が1週40時間超の時間外・休日労働時間数1か月当たり80時間超となり、これを担保するため、事業者は、労働時間の把握を客観的な方法(例:パソコンの使用時間、ICカード)による義務が課されます。これは全ての労働者が対象となりますから、管理監督者や裁量労働制適用対象者であっても、事業者は労働時間把握義務を負います。

 ところで、過労死等調査研究センターの分析結果によれば、労働時間把握の正確性が与える影響度につき、「正確に把握されていない」を0《基準》とした場合、「あまり正確に把握されていない」が、①週の残業時間-2.21、②年間の年休取得日数0.38、③メンタルヘルス状況-0.76、「概ね正確に把握されている」が、①-5.19、②1.23、③-1.35、「正確に把握されている」が、①-6.13、②1.93、③-1.65となっており、労働時間が「(あまり)正確に把握されていない」群よりも、「(概ね)正確に把握されている」群の方が、週の残業時間は短く、年休取得日数が多く、メンタルヘルス状況が良好である傾向が見られました(2017年版過労死等防止対策白書第3章参照)。

 これまでは自己申告制により労働時間の把握が必ずしも正確になされてこなかったとしても、今後は労働時間把握自体がコンプライアンス上も適正に実行されなければならなくなったのですから、まずは従業員個人、職場集団、組織全体の労働時間数を把握しましょう。

 そして、従業員個人レベルでは時間外労働が多くなっているか、また年次有給休暇を取得しているかを、職場集団・組織全体レベルでは部門ごとや管理監督者ごと、組織全体の時間外労働者の割合が高くなっているかを分析し、人事労務管理スタッフが管理監督者とともに人員の配置や仕事の与え方などの改善策を検討します。

 職場集団レベルの改善だけでなく、従業員個人レベルの改善もしつつ、意思疎通しやすい環境づくりをすると、職場に良好な人間関係が構築されていくでしょう。


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