事業承継で遺留分の放棄は有効な手段か?

 後継者とならない相続人からの遺留分減殺請求による紛争を防止するため、遺留分の放棄をすることが考えられます。

 遺留分権利者となる相続人は、相続の開始前に家庭裁判所の許可を受けて遺留分の放棄をすることができます。

 事業承継において、後継者とならない相続人が遺留分放棄に同意をして各自で家庭裁判所の許可を得ればよいのですが、後継者が代わって許可を受けることはできませんので、非後継者の相続人が手続を踏んでくれなければ放棄の効力は生じないというデメリットがあります。

 また、共同相続人の1人のした遺留分の放棄は他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません。相続人間で後継者とならない相続人に関する遺留分の放棄が合意され、一部の共同相続人が家庭裁判所の許可を受けたとしても、他の共同相続人が個別に許可を受けなければ、許可のない相続人に関する遺留分の放棄の効力は生じません。

 さらに、遺留分放棄許可の申立てが個別に行われるため、家庭裁判所の判断も個別になり、統一的な遺留分放棄がなされない可能性があります。

 なお、相続開始後に遺留分の放棄をすることは自由であり、そのための手続は不要なのですが、あくまで共同相続人の意思次第ということになります。

 そうすると、遺留分の放棄は事業承継をするための一つの手続にはなり得ますが、遺言により後継者に株式を集中させたとしても、結果として株式の分散を防ぐことができないことがあり、円滑な事業承継を行い、後継者の地位を安定させることはできない可能性が出てきます。他方、遺留分の放棄が後継者とならない相続人間で区々になれば、相続人間の衡平を確保することもできなくなるでしょう。

 家庭裁判所における個別の許可という手続面の修正をしたのが、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)における経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可です。これらの確認申請や許可申立ては後継者が単独で行うことができるのが特長です。


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