懲戒解雇した労働者の退職金を不支給とするには?

 退職金は、その支給条件が労働協約、就業規則、労働契約で明確に規定され、使用者が支払義務を負う場合には、賃金と認められます。退職金は、基礎賃金に勤続年数別の支給率を乗じて算定されることが多く、賃金の後払い的性格を有するが、功労報償的性格も有するとされています。

 退職金の功労報償的性格から、懲戒解雇された労働者には退職金を支払わなかったり、減額したりしている企業があります。しかし、退職金が賃金の後払い的性格を有することからすれば、就業規則における退職金減額・不支給規定を有効に適用できるのは、労働者のそれまでの勤続の功を抹消(全額不支給の場合)ないし減殺(一部不支給の場合)する程度の著しく信義に反する行為があった場合に限られるというのが裁判例の傾向です。

 また、労働者が退職後に同業他社に就職したり、同業の会社を設立したりした場合、就業規則において、競業避止義務違反に基づき退職金の全部または一部を不支給としている企業もあります。この場合、退職後一定期間に同業他社に就職した場合、退職金を半額にするという規定を有効とした最高裁判決がある一方、退職後6か月以内に同業他社に就職した場合には退職金を支給しない旨の就業規則の規定は、退職従業員に継続した労働の対象である退職金を失わせることが相当であると考えられるような顕著な背信性に限って有効とすべきであるとした下級審裁判例があります。退職労働者には職業選択の自由(憲法22条1項)があることからすれば、顕著な背信性といった限定をした方がよいでしょう。

 いずれにせよ、就業規則に退職金減額・不支給規定を設けておかなければ、どのような事由があっても退職金が賃金である以上、使用者は支払わなければなりません。

 そこで、使用者としては、就業規則において、懲戒解雇・諭旨解雇またはそれに相当する事由や競業避止義務違反のうち、退職者のそれまでの勤続の功を抹消ないし減殺する程度の著しく信義に反する場合を、退職金の全額不支給または一部不支給の事由として定めておきましょう。

 なお、懲戒解雇とは別に、退職前の人事考課が最低であった労働者について退職金の一部を減額するという企業があります。この定めが有効に適用できるのは、労働者のそれまでの勤続の功を減殺してしまう程度の著しく信義に反する場合に限られます。


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