労働者側請求対応の法律知識-債務者の帰責事由

 債権に関する民法が改正され、2020年に施行されます。過労死や労災事故をめぐる安全配慮義務については、債務者(使用者)の帰責事由が問題となります。

 安全配慮義務の立証責任について、債権者である労働者側は、損害に対する特定された具体的安全配慮義務の存在と、使用者が同義務に違反した事実を立証しなければならないというのが最高裁判例です。これに対し、現行民法上、使用者は、「債務者の責めに帰すべき事由」の不存在を基礎づける事実、すなわち債務者の故意・過失または信義則上これと同視すべき事由(例:管理職などの履行補助者の過失)の不存在を立証するというのが通説的な解釈です。

 この点につき、改正民法は、「契約その他の債務の発生原因及び取引通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由」と定めています。いくつかの法解釈上の問題点を解消したことはさておき、法施行後は、安全配慮義務違反=使用者の過失が、①債務の発生原因と②取引通念から判断されることになるでしょう。前者については、就業規則、労働契約書、職務記述書、辞令などから安全配慮義務の内容が評価されることになり、後者については、法令、行政機関の指針・通達、裁判例、業界の動向などから安全配慮義務違反が評価されることになると推測されます。

 就業規則を基本部分しか定められていない、労働契約書は定型的な書式で済ませているというのであれば、改正民法に対応できないおそれがあります。特に労働者個人との労働契約書については、採用時の事情や職務内容なども具体的に書き込むことが考えられます。売買契約書などの商取引では契約の背景から書き込む必要が出てきますので、労働契約が例外というわけにはいかないでしょう。

 労働契約締結の場面に限らず、メンタルヘルス不調により就業上の措置をする、職場復帰支援プランを作成するといった場合、当該労働者の健康状態、就業上の措置を講じる必要性、今後の勤務形態、今後の処遇、就業上の措置解除の予定などを決定書に具体的に書き込んでおくことが肝要です。


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