研究所の事務社員が長時間労働により自殺した事案

 事案の概要

 本件は、研究所の事務社員(男性・死亡時49歳)が、配置転換後の職場で書類作成業務が増加するとともに、チームリーダーとして部下の管理や決裁業務も加わったことから、恒常的な長時間労働に従事し、これに伴い睡眠不足となり、自宅で自殺をした事案です。

 自殺の原因

 研究所は、職場での鍵カード入退室記録、イントラアクセス記録およびコンピュータ起動と終了時刻のログおよび文書ファイルの保存・更新履歴などを保存していましたが、これらの資料を分析すると、残業時間は自殺1か月前が156時間、2か月前が120時間、3か月前が103時間、4か月前が107時間と算定することができました。

 客観的なデータから長時間労働が証明されており、長時間労働によるストレスが蓄積するとともに、睡眠不足となり、自殺したことが原因と考えられます。

 予防のポイント

 使用者としては客観的なデータも駆使して労働時間を把握し、長時間労働が認められればこれを現実に是正する具体的な措置を講じるべきでした。

 それだけでなく、配置転換は、1~2か月は何とか頑張れる人が多いのですが、それ以降になるとエネルギーが枯渇した状態になり、うつ病の原因になるがあることが医学文献で指摘されています。本件では、配置転換により業務内容や業務量に変化が生じて長時間労働になっています。配置転換後は、上司が業務の内容や量を把握し、長時間労働になり得る原因を早めに除去するべきでした。また、例えば午後10時以降の残業をする場合は所属長や人事部に所要時間と理由を事前に申告させるなど深夜残業を現実に抑制する措置を講じることも必要でした。

 配置転換を機にメンタルヘルス不調となるケースは多いですので、配転後に上司が部下の業務量や残業時間数の変化を見逃さないことが肝要です。また、ストレスチェックを実施した場合には集団分析の結果により職場環境を改善しましょう。


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