建築設計工事会社の技術部門社員が長時間労働により自殺した事案

 事案の概要

 本件は、建築設計工事会社の技術部門社員(男性・死亡時22歳)が、恒常的な長時間労働に従事していたところ、突然失踪し、2005年11月13日に失踪先で縊死した事案です。

 自殺の原因

 発症前5か月間における月の拘束時間数が300時間を超え、月の残業時間数が100時間を超える長時間労働に従事していましたが、それだけではなく、社長から叱責や暴力を受けていました。失踪当日の手帳には、長時間労働で寝る時間がないことや、社長から暴力を受けて辛かったことがつづられ、「結果としてこのままこの会社にいたら殺されると思った」と書かれていました。

 手帳の記載からも明らかなとおり、長時間労働と社長のパワーハラスメントが自殺の原因です。

 予防のポイント

 長時間労働で疲労しているところに、社長から些細なミスで暴力を受ければ、意欲が低下し、無価値感が高まります。上司の叱責が単独ではパワハラとして違法とまでは認められなくても、長時間労働とセットになれば相乗作用によりストレスが増幅されるので、結果と指定法の評価を受けることになります。特に新人や若手の社員であれば、ストレス対処能力が低いため、パワハラの影響は顕著となり、会社の損害賠償責任は免れないでしょう。

 このように長時間労働+パワハラの事案は会社の損害賠償責任が認められる可能性が高いのですが、現在はいずれも会社が予防策を講じるべき事項です。衛生委員会で調査審議をするなどして予防策を樹立することが必要です。その際には、新人・若手への配慮も検討するとよいでしょう。

 また、就業規則でパワハラを禁止し、懲戒になることを明記する方がよいです。


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