社内会議で市販本をスキャンやコピーをしたら著作権侵害となる?

 会社にある市販本の一部をスキャンし、社内会議の資料として社内ネットワークで共有することはできるのでしょうか。

 まず市販本をPDFにして社有パソコンまたはDVDに保存したら、その複製権を侵害したことになります。また、このPDFを社内ネットワークでアクセス可能な状態に置いたら、市販本の著作権者が有する公衆送信権を侵害したことになります。著作権法上の「公衆」には、特定かつ多数の者を含みますので、社内という特定の範囲であっても多数の社員がアクセスできるのでしたら、公衆送信権侵害となるのです。

 それでは、社内で増えてきた書籍を整理するため、その全部をスキャンした上で、書籍そのものを廃棄した場合、結果として複製物の数が増えないことになりますので、複製したことにはならないのかというと、そうではありません。スキャンという方法で一度複製物を有形的に再製している以上、著作物を無断で複製したことになります。

 また、社内会議で資料として市販本をコピーして配布することができるでしょうか。

 著作権法は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」、すなわち私的使用のための複製を禁じていません。例えば、個人がレンタルショップで趣味の音楽CDを借りてダビングするような場合です。その意味で、個人的または家庭内でのいわゆる「自炊」(電子書籍化)は許されます。

 しかし、会社内で業務上使用するために著作物を複製することは、個人的使用とはいえず、家庭内に準ずる限られた範囲での使用ともいえませんから、市販本の著作権者が有する複製権を侵害したことになります。

 「自炊」について、裁判例は、「自炊代行業者」が書籍を裁断、スキャン、PDF化して電子書籍化した「自炊」作業は独立した事業主体で複製の主体であり、個人の「手足」として動いているわけではないと判断しています。

 この判断は会社内でのスキャンやコピーにも当てはまります。著作権者の許諾により著作物を利用するについての検討の過程における利用でない限り、社内会議で書籍等をコピーしないようにしましょう。

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