事業承継における後継者育成の留意点は?

 親族内承継において後継者を育成するには、少なくとも次の3点に留意しなければなりません。

 第1に、後継者は、経営者が築いた企業ブランドや認知度、資産などの経営資源を承継するので、自ら経営資源を調達することが不要である一方、経営者が設定した事業ドメインに縛られ、経営者の意思に配慮しなければならなくなります。このこと自体が直ちに問題となるわけではありませんが、経営者は、後継者と円滑なコミュニケーションを取り、事業ドメインの再構築について後継者の意思を尊重する必要があります。

 第2に、後継者育成の開始時期です。後継者を新卒採用する場合、自社特有の能力やノウハウを身に付けられ、早期に組織文化や組織風土に触れることで従業員の支持を得られる一方、自社の慣習に同質的になることで後継者の思考や行動が硬直化するため、外部環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できなくなるおそれがあります。これに対し、後継者を中途採用する場合、自社以外の多様な価値観を醸成し、自社を客観的に分析する能力を育成できる一方、他社での経験や知識を重視すると、自社の組織文化や組織風土を軽視し、従業員との間でコンフリクトが生じるおそれがあります。それぞれ長所と短所がありますので、いつの時点から後継者育成を開始するかを見極める必要があります。

 第3に、後継者への保証の引継ぎです。親族内承継の場合、自社が負っている金融債権の連帯保証債務を経営者から引き継ぐことがありますが、後継者が保証債務を負う覚悟を示して従業員に表明することで自社の事業に関する責任意識を醸成できる一方、後継者がリスクを回避して積極的に事業への投資をしなくなるばかりか、そもそも後継者のなり手がいなくなるおそれがあります。そこで、あらかじめ取引金融機関と協議する必要があります。

 後継者の育成には時間を要するので、従業員、取引先や金融機関など関係者の理解を得ながら進めていくことが肝要です。


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