事業承継を経営者の生前に完了しておくには?-生前贈与
生前贈与は、売買と同様に契約ですから、経営者の生前に行うものですが、無償である点が売買と異なります。
事業承継において、受贈者である後継者が購入資金を準備しないでよく、また株式や事業用資産の承継が完了する点がメリットですが、後継者とならない相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性がある点がデメリットといえます。
無償であるとしても、負担付で贈与することはできます。例えば、受贈者である後継者に対し、贈与者である経営者を扶養するとの義務を負わせることができます。この義務(負担)を履行しないときは、贈与者は贈与契約を解除することができます。
後継者に株式や事業用資産を贈与するのであれば書面を作成した方がよく、書面による贈与は当事者が一方的に撤回することはできません。逆に、書面によらない贈与は履行の終わった部分を除き当事者が撤回できますので、特に後継者側が不利になるでしょう。
書面を作成して贈与することが望ましいとしても、後継者に株式や事業用資産を無償で承継させてしまうことに懸念があれば、一定の条件を付し、その条件(停止条件)が成就したときに贈与の効力が生ずるとすることができます。例えば、承継する事業に必要な資格や許認可を得たことを条件とすることが考えられます。条件を付すことにより段階的に贈与をすることが可能となります。逆に条件(解除条件)が成就したときに贈与の効力を失うこととすることもできます。例えば、後継者が経営者の子と婚姻したことにより事業承継を行う場合、その婚姻関係が破綻したことを条件とすることが考えられます。条件を付すと、いったん贈与するとしても、受贈者である後継者の資質を見極めることができるようになります。ただ、後継者の地位を不安定にしますので、慎重に検討しましょう。
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