使用者の安全配慮義務

 安全配慮義務は、昭和50年に自衛隊員が事故死した事案で言い渡された最高裁判決により、特別な社会的接触の法律関係(労働契約も含まれます)に入った当事者間における信義則上の付随義務として認められました。この義務に違反した場合は債務不履行責任を負います。労働契約法5条はこの判例法理を明文化しました。

 このことにより、企業が労働災害を発生させた場合、不法行為または債務不履行により損害賠償責任を負うことになりました。使用者の義務を、不法行為では注意義務、債務不履行では安全配慮義務と表現しますが、裁判実務上は義務の内容について特段の区別をしていません。

 労働基準法や労働安全衛生法は企業を取り締まる公法的規制ですが、これらの法律が注意義務または安全配慮義務の内容にもなり、私法的に規制されます。刑罰が科される公法よりも安全配慮義務の範囲は広いので、単に法令を遵守しているだけでは企業の義務を果たしたことにはなりません。パワーハラスメントの防止も安全配慮義務の内容になり、パワハラが原因で労働者が自殺した場合、企業は、処罰されませんが、遺族に対して高額な損害賠償責任を負うことになります。

 法的問題以外に、企業の外部環境ではステークホルダーに対するイメージや信用の低下、内部環境では従業員のモチベーションやモラールの低下を招きますので、ハラスメントや長時間労働を防止する対策を実行することが肝要です。

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