うつ病による休職からの職場復帰に当たっては、労働者の精神障害が治癒したのか、すなわち労働義務の履行ができるのかが問題となります。
最高裁判決によれば、職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして、当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができるかどうかという観点から判断されます。
従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したとまではいえないとしても、当該労働者の職種に限定がなく、他の軽易な職務であれば従事することができ、当該軽易な職務へ配置転換することが現実的に可能であったり、当初は軽易な職務に就かせれば、程なく従前の職務を通常に行うことができると予測できる場合には、職場復帰を認められることになります。
職場復帰をする際は、使用者はその企業の規模や当該労働者の配置、異動の可能性、職務分担、変更の可能性から能力に応じた職務を分担させる工夫をした方がよいです。
特に精神障害を理由とする休職・復職に際しては、労働者本人や家族、使用者だけでなく、主治医や産業医、衛生管理者が連携することが重要でしょう。