事業場外みなし労働時間制と所定労働時間外のメール送信

 営業職について、事業場外みなし労働時間制を適用して直行直帰ができるようにしているが、実際には帰宅後に事務作業を行っており、深夜や休日にもメールを送信している場合、残業代は発生するのでしょうか。

 そもそもメールで管理職から随時指示を受けながら営業をしていたり、それらの手段により労働時間を把握することが可能であったりすると、事業場外みなし労働時間制の適用を否定するのが裁判例の傾向です。

 また、営業職が帰宅後も事務作業を行うことが義務づけられているとしたら、所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合に当たり、残業代が発生することがあります。

 さらに、管理職が所定労働時間外にメールを送信して、部下に対し、深夜や休日でも即時対応する業務上の指示を与えることを明記していたことから、部下が深夜や休日に取引先や顧客に対応したという場合は、使用者の指揮命令下に置かれたものとして労働時間性が肯定されます。

 仮に明示的には指示を記載しなかったとしても、メールの内容や業務内容から管理職が黙示的に業務指示を与えたと認められ、部下が深夜や休日に対応せざるを得なかったのであれば、使用者の指揮命令下に置かれたものとして労働時間に当たることがあります。

一方、管理職についても、業務内容や業務量などから所定労働時間外にメール送信をする必要があったのであれば、黙示的に指揮命令下に置かれたものと認められるので、労働時間性が認められることがあります。

 労働安全衛生法は事業場外みなし労働時間制でも労働時間状況把握義務を課しているので、まずは労働時間を適正に把握した上で、みなし労働時間制の内容を再検討した方がよいです。

 そして、所定労働時間外のメール送信を禁止することを検討した方が、残業代請求というリスクを減少させることになるでしょう。

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