売買契約を締結する場合、その内容に齟齬が生じないよう、契約書の作成が必要となります。商品の引き渡しと売買代金(売掛金)の支払いが同時に行われるのであれば、売買契約書がなくても売掛金の回収に問題が生じないのが通常でしょう。
しかし、継続的な取引をするのであれば、納品をしてもその都度売買代金が支払われることがないのが通常ですので、契約内容を特定する、売買代金(売掛金)を回収する、紛争を解決するなどの目的で継続取引基本契約書を作成しています。
具体的には、目的物(種類、数量)、品質の表明保証、納入の時期や場所、検収、所有権移転時期、売買代金(売掛金)の額、支払の期限、支払方法、期限の利益喪失、遅延損害金、相殺予約、継続取引の停止事由(契約違反、差押え、強制執行、倒産等)、損害賠償額の予定などを定めます。
目的物については、個別契約で特定するにしても、買い主が変更できる旨定めておくと事情変更による対応ができます。
目的物の所有権移転時期は、契約成立時というのが裁判例ですが、契約により目的物の引き渡し時、検収終了時、代金支払時に変更することができます。継続取引基本契約では、個別契約における商品の検収終了時にするのが通常です。売り主としては、引渡時に繰り上げた方が商品の滅失や毀損の責任を負わなくてすむ一方、代金支払時の方が買い主の倒産時に商品を取り戻すことができます。
商人間の売買においては、買い主が目的物を受領したときは遅滞なく検査をします。買い主が検査により目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したとき、また目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することのできない場合に買い主が6か月以内にその不適合を発見したときは、直ちに売り主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする目的物の修補、代替物の引き渡しまたは不足分の引き渡しによる履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができません。そこで、契約書では検査期間が定められることが多いのですが、買い主としてはその期間を定めない方が有利となります。売り主の責任の期間は通常6か月ですが、売り主としてはこの期間を短縮することが考えられます。
売り主としては、売買代金(売掛金)を回収するため、商品の納入時に買い主の代金支払いに不安が生じる事情が発生した場合は、納入の全部または一部を中止することができる条項を入れます。その際には、買い主に保証金を差し入れてもらいましょう。また、支払の期限を短期間にしたり、取引限度額を設定したりしておけば、残債権額が大きくならず、回収不能のリスクを抑えることができます。
また、個別の取引で継続取引基本契約とは別に売買契約書を作成することは少ないでしょうが、発注書、納品書、受領書、請求書、出荷依頼書といった書類を作成しておいた方がよいでしょう。
弁護士が継続取引基本契約書や売買契約書を作成することもできます。売買代金(売掛金)の回収のため裁判を検討しなければならないときは、継続取引基本契約書や発注書等の契約内容に関する資料、支払明細などをお持ちになり、お早めにご相談ください。